【PFSOZ】No Rain, No Rainbow
「バラル・アリーナでの闘いの様を、寝所で人伝に聞くことほど口惜しいことはない。したがって、自ずと夏になると意気が漲ってくるという寸法よ」
デンドロン卿はそう言って、サイラスの心配を笑い飛ばした。笑い声で椅子が軋む。東屋の椅子は、老いてなお大柄で体格の良い彼には、いささか窮屈に見えた。
「それは羨ましいかぎりだ。私はどうも夏は苦手でな。王都の夏は、アヴォンス生まれにはどうも厳しいようだ」
サイラスの言葉には、かすかにため息が混ざっている。
「貴殿からそのような弱音を聞くことになろうとは。明日は雹が降るのでは?」
デンドロン卿は瞠目し、驚きを隠さない様子で応えた。
「これが老いということだろう。だが、最近はそれも悪くはないと思うようになった。頼もしく成長した子の姿を見ることが出来る、ということでもあるのだから」
己らしくないことを言っているという自覚はあった。サイラスは苦笑いを浮かべる。
「アヴォンス候……」
「ああもう、そんな風に辛気臭いことばかり話していてはいけない! 美しい庭に囲まれ、しかも美しい私もいると言うのに……!」
先ほどから噴水と太陽の方角を何度も確認していたナルキスが、不意に会話に割って入ってきた。意気揚々と噴水を指し示す。
「私の勘が正しければ、もう少しであの噴水のところに虹が出るはずだから、それを見ながらもっと前向きな話をしよう」
----
アヴォンス侯は「青天十三杖」の一員ではあるが、結社の会合の類にはあまり顔を出さないことで知られている。しかし最近は方針を変えたのか、十三杖の会合の場として、自らの邸宅を頻繁に提供しているようだ。
氏の「付き合いが悪い」のは、国家保安局の長官として、ある程度周囲と距離を取ることが求められる為であろう。その氏がこういった行動をとるということは、なかなかに興味深いことだ。
いずれ家を継ぐエンシス伯の為の根回しだろうか? それとも何か政治的な意図があるのだろうか?
(タブロイド紙『デイリー・ぜラルディア』記事からの抜粋)
----
※時系列は「Right Eyed」illust/103484849 より前で、聖夏祭がはじまったばかりの頃になります。
お借りしました
□ズーザ・デンドロン・シルシウムさん illust/102186187
□ナルキス・エーレウォーン・デュ・オェングスさん illust/102168114
□サイラス・フォークナー illust/102015015
デンドロン卿はそう言って、サイラスの心配を笑い飛ばした。笑い声で椅子が軋む。東屋の椅子は、老いてなお大柄で体格の良い彼には、いささか窮屈に見えた。
「それは羨ましいかぎりだ。私はどうも夏は苦手でな。王都の夏は、アヴォンス生まれにはどうも厳しいようだ」
サイラスの言葉には、かすかにため息が混ざっている。
「貴殿からそのような弱音を聞くことになろうとは。明日は雹が降るのでは?」
デンドロン卿は瞠目し、驚きを隠さない様子で応えた。
「これが老いということだろう。だが、最近はそれも悪くはないと思うようになった。頼もしく成長した子の姿を見ることが出来る、ということでもあるのだから」
己らしくないことを言っているという自覚はあった。サイラスは苦笑いを浮かべる。
「アヴォンス候……」
「ああもう、そんな風に辛気臭いことばかり話していてはいけない! 美しい庭に囲まれ、しかも美しい私もいると言うのに……!」
先ほどから噴水と太陽の方角を何度も確認していたナルキスが、不意に会話に割って入ってきた。意気揚々と噴水を指し示す。
「私の勘が正しければ、もう少しであの噴水のところに虹が出るはずだから、それを見ながらもっと前向きな話をしよう」
----
アヴォンス侯は「青天十三杖」の一員ではあるが、結社の会合の類にはあまり顔を出さないことで知られている。しかし最近は方針を変えたのか、十三杖の会合の場として、自らの邸宅を頻繁に提供しているようだ。
氏の「付き合いが悪い」のは、国家保安局の長官として、ある程度周囲と距離を取ることが求められる為であろう。その氏がこういった行動をとるということは、なかなかに興味深いことだ。
いずれ家を継ぐエンシス伯の為の根回しだろうか? それとも何か政治的な意図があるのだろうか?
(タブロイド紙『デイリー・ぜラルディア』記事からの抜粋)
----
※時系列は「Right Eyed」illust/103484849 より前で、聖夏祭がはじまったばかりの頃になります。
お借りしました
□ズーザ・デンドロン・シルシウムさん illust/102186187
□ナルキス・エーレウォーン・デュ・オェングスさん illust/102168114
□サイラス・フォークナー illust/102015015
SHIMA108
Comments
No comments