LiteXiv
日月
回転寿司のカウンター向かい。
彼女はにっこりと微笑んでいた。
俺にではなく、俺の前を通過していく海老に。
つまり俺は海老に負けた。
ああくそ、インド洋だか何処だか知らん海域で水揚げされた挙句、
急速冷凍で鮮度を保ったまま輸入された¥210のボタン海老のようなもの(固有種未詳)に。
せめて隣を流れる大間産の本鮪(¥500)ならば諦めもついたんだ。
津軽海峡の荒波に揉まれ、海面を荒々しく踊る大鮪。
熱帯の海でのうのうと育った甲殻類風情なんかとは勝負にならない。
海洋類ヒエラルキーの上位。この寿司屋に限定して言えば王。
…まあ、そんな事はどうでもいい。
その憎き海老を取る―ふりをした。
あっ、と驚き、そしてすぐに安堵の表情を浮かべる彼女。
そして初めて、俺に視線を合わせるのだ。
つまるところ片想いとはこういう風にやっていけばいい。
取るに足らないものに嫉妬してノーアクションでは、何も進展しないのだ。
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